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  願いは誓いと共に

2011/2



この病気を治していただきたい。人間関係を修復していただきたい。災難から逃れ、いつまでも健康で、心穏やかに、商売繁盛、事業発展、家庭円満なさしめ給え。私たちの願いは、尽きることがありません。

それは、決して悪い事ではない。人間に願い事があるのは当然です。その謙虚さや切実さから、大切な心が生まれます。神仏に願うことなどないと強弁する人は、むしろ人生に無知で、過信や慢心をした不幸な人と言えます。信仰を持てないことほどの不幸はありません。

仏教は、無欲の聖者に説かれた倫理や哲学の体系ではありません。徹頭徹尾、救いの教えです。特に、法華経の教えは、末法の欲が強い人々に説かれた救いの教えであり、苦悩する私たちの願いを聞き届け、一人では到底越えられそうもない壁を、妙不可思議な御力を添えて、越えられるように、現証の御利益を顕してくださるのです。

厳しい社会に突入しています。右肩下がりを前提にした日本です。時代の追い風もなく、むしろ逆風が吹き荒れています。世界に類を見ない超少子高齢化、年金制度の本格的な行き詰まり、すでに一月には世界第二位の経済大国という地位を中国に譲り渡しました。

時代は変わった。ブランドからユニクロの時代。もはやバブル期の甘えなど許されない時代です。感覚のズレを修正し、余程の覚悟を持たなければ全てを失います。季節外れのバブル気分や呑気さは、今は許されても未来に汚名と罵倒を浴びせられるでしょう。

何より、強い緊張感と危機感が必要です。萎縮することを求めているのではありません。むしろ、積極的に勝負すべきです。厳しい試合を控えているスポーツ選手のように準備しなければなりません。日々の練習を欠かさず、精進してゆくしかありません。

困難が予想される一年のはじめ。私は「精進」という言葉を座右に置いていただきたいと申しました。 「精進」とは、御法さまに従って他のものに染まらず、一心に前に向かい進んでゆくことを言います。その語源はサンスクリット語では「ビリア」、「打ち克つ」「制する」という意味で、自分の弱い部分、欲望の心、怠りの心に競り勝って日々前に進むことです。

この言葉から日本人が想像するのは「精進料理」ですが、これは 「悪に染まらない」という意味を穢れの思想と結びつけ「魚や鳥を食べない」とした偏った解釈です。いくら生臭いものを避けていても、あるべき方向を決めて善行を積み、努力していなければ「精進」にはなりません。

真実の仏教です。努力や精進のないところに御利益はありません。棚からぼた餅のような御利益などあるはずがないのです。

元旦の初総講での御教歌。

「われ道にすゝむ心をてらし見て 仏は力そへ給ふなり」

厳しい時代だからこそ拝見した御教歌です。精進する心を見て、み仏は、その力を添えてくださる。心を定めて、一心に前に向かって進んでゆく心を忘れてはいけない。

そして、この御教歌とセットで拝見していただきたいのが、次の御教歌です。

「み仏にたてし誓ひをやぶらずば いまより法の光りをぞ見る」

漠然とスタートしていたら精進にはなりません。凡夫は自己肯定の名人です。貪瞋癡慢の隠れた病を抱えています。それを克服してみ仏のお力添えをいただくために、この御教歌が大切です。

私たちには願い事があります。それは罪ではありません。しかし、この御教歌二首の御意を合わせていただくと、より速やかに現証の御利益をいただく道、お力添えをいただきやすいご信心の進め方、生き方が見えてきます。

「祈願」と「誓願」という二つの言葉があります。一文字しか違いませんが、「祈願」とは「ある目的が達成されるように、神仏に祈り願うこと」、「誓願」は「神や仏に誓いを立て、物事が成就するように願うこと。」と辞書にあります。

さて、先に挙げた御教歌をいただきながら、「祈願」と「誓願」のどちらが御法さまにとって御力を添えやすいか考えてみるべきだと思うのです。

どちらも言葉の意味は「願いの成就」に違いありません。しかし、「祈願」が自分の願いをそのまま神仏に投げかけているのに対して、「誓願」では自分が為すべき努力が明確に表明された上で、物事の成就を願っています。この点は、私たちにとって大きな違いです。

御法さまのお気持ちになることは出来ませんが、想像してみると「病気全快、心願成就、災難除滅、商売繁盛、事業発展、家庭円満と、願っているのは分かるが、どこを支えていいか、どこに力を添えてやればいいやら」と、御法さまも御祈願ばかりが多い人には思っておられるのではないでしょうか。御祈願を持つことは悪いことではありませんが、「願い」は「誓い」と共にした方が、御法さまのお力添えをいただきやすいのではないでしょうか。

天台大師は摩訶止観第七に、
「願とは誓なり」
とお示しです。そもそも、願いとは誓いと共にありました。願いは誓いでなければならないのです。祈願は誓願と共にあったのです。

「誓願なきは牛の御なきが如し」

同じく天台大師の御指南です。もしも、「祈願」ばかりで「誓願」がなければ、牛や馬が御者もなく、草を求めてフラフラと当てもなくさまようのと同じようになる。

御祈願が成就する。この現証の御利益こそ佛立信心の真骨頂です。生きてまします御法さまに祈りを捧げ、その大慈大悲によって凡夫の願いが成就するのです。

しかし、いつしかそのご信心が、一方的で、欲張りなだけの信心前に陥ってしまったら、人生を踏み誤ります。御宝前に対する気持ちはあっても、それが甘えや依存心だけになってしまったら佛立信心の筋から外れてしまうでしょう。

だからこそ、私たちは「菩薩の誓い」で一年をスタートしているのです。誓いを立て、誓いを守る、誓いを破らないようにと努め励む。そうすれば、一人ひとりの「願い」が速やかに成就し、誰もが確かに御法さまのお力添えをいただく。努力精進のないところに御利益はありません。誓願を立て、精進をしたなら、「いまより」光りを見るのです。今この瞬間からです。

願いは誓いと共に。まずは誓いを立てて、それを忘れず、折れず、曲がらず、精進しましょう。必ず、高い壁も乗り越えられるはずです。







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