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  本門佛立の義

2001/11



 素晴らしい秋空のもと、盛大に高祖日蓮大菩薩御会式併せて住職就任式が厳修されました。
 小山日誠上人、鈴江日原上人に御唱導を賜り、有縁の御導師御講師、ご来賓の方々に御出座ご列席を頂戴し、地元のご信者皆さま方お参詣の中、三宝のご宝前に住職就任の宣誓をさせて頂きました。
 偉大なる日博上人が礎を築き、大任を引き継がれた先住日爽上人が三ツ沢移転、大本堂建立、寺門興隆、末寺建立のご奉公をされた妙深寺を、私のような若輩が住職の大任に当たることこそ恐ろしく、身に迫る重大な責任と責務を感じております。
 先師先徳をはじめ、先亡功労者の御遺徳を汚すことなく、多くの方の激励や期待に恥じず、真実の仏教、本門佛立宗の興隆、妙深寺の発展に身命を捧げることを目標とし、懸命にご奉公をさせて頂きたいと考えております。
 住職就任の宣誓は、妙深寺本堂の御本尊、お祖師さまの御尊像に向かい、日博、日爽両上人の遺影の御前でさせて頂きました。
 どこのお寺に所属される方でも、妙深寺のどなたでもそうだと思いますが、妙深寺本堂のご本尊お祖師さまは、私にとって特別に気持ちの通じる御法さまであり、お祖師さまです。
 なぜなら、先住の御怪我の直後、泣きながらお看経をさせて頂いて、その皆の御祈願を確かにお聞き届け下された御法さまであり、お祖師さまであられるからです。
 何時の言上でもそうでなければなりませんが、威儀を正し伏して住職就任宣誓言上をさせて頂くに当たり、ガラスの上を歩いているような大きな緊張がありました。
 御本尊、御尊像への住職就任の宣誓は、御仏への勧請(勧め請い、ここにお出まし頂くという意味)の御文からはじまり、諸佛諸尊、高祖日蓮大菩薩、門流有縁の菩薩先師先聖、門祖日隆大聖人、佛立開導日扇聖人、歴代の御講有上人、日博上人、先住日爽上人を御呼び出しさせて頂いての言上となりました。
 感慨極まり、言上の冒頭「南無久遠実成大恩教主、釈迦牟尼世尊」という御文を読み上げた途端に、期せずして涙が溢れてきてしまいました。
 それは、言い知れぬ「住職」というご奉公の重責や怖さと共に、これから先、この身体と小さな命を使ってさせて頂くご弘通ご奉公の壮大な目的と目標を感じて溢れ出た涙ではなかったかと感得するのであります。
 勧請させて頂いた御仏、お祖師さまをはじめ、この横浜妙深寺の先住に至るまでを、壮大な御仏の教えの系譜として頂けば頂くほど、小僧清潤の進むべき方向を教えて頂いているようで御座いました。
 ブッダ・ゴータマ、後の私たちが「釈迦牟尼世尊」と頂く御仏は、遠くインドの地に生まれ、当時のマカダ国に至って、ついに菩提樹の下において、正しく覚りを成就されたのであります。
 およそ今から二千五百年前から数千年の時を経て、その尊い御教えはヒマラヤ山脈を越え、砂漠を渡り、大陸を縦断して海へ到達し、波を蹴って日の出る国「日本」へと伝来いたしました。
 しかし、同時に仏教の生まれた国インドでは、仏教は幾度も統一国家や異民族によって滅ぼされ、ヒンドゥー教やイスラム教が国教の地位を争い、暴力の跡が残る多くの荒廃した遺跡を残すのみとなりました。
 また出家者と在家信徒の狭間で、仏教は断絶や分裂を繰り返し、御仏の真実の教えは消え去ろうとしました。
 ゆっくりとした時間をかけて、御仏の教えが文字となり、数多くの経典を生み出し、それらの経典を中国へと持ち帰る苛酷な旅が、気の遠くなるような時間をかけてはじまりました。
 翻訳の必然性から膨大な経典は集積され、また解釈の必然性から集約された経典のそれぞれの勝劣浅深を判じ、御仏の御本意を解釈する作業が生まれました。
 膨大な経典は、また膨大な解釈を生み出し、諸宗派を生み出し、中国では観音信仰を残すのみとなり、日本に伝来した後も仏教諸宗は乱立し、御仏の教えの真意は表されなかったのであります。
 建長五年四月二十八日、お祖師さまが法華経の御文の通り、上行菩薩として末法にお出ましになり、法華経本門の御題目を世に顕され、遥か久遠からの真実の仏教がこの宇宙にまた弘まることとなったのであります。
 しかしながら、末法は「悪世」と教えて頂く通り、お祖師さまの御教えも清く流れることは難しく、門祖日隆大聖人の御出現を頂くまで混迷の時代が続きました。
 その門祖が顕された御題目流通のご信心の在り方も、僧侶の腐敗などでまた混迷の時代を迎えて、日扇聖人が佛立講を開講されるに至るのであります。
 我が本門佛立宗は、お祖師さまに命名を頂く宗門であり、歴史を浅く思われる方がおられますが
それは大きな誤りで、悠久の歴史の中で光りを放ち、正統な系譜を頂くのは、私たち本門佛立宗のみなのであります。
 それを証明されるかのように、日博上人は大変な時代にご苦労の中で、ご信者一人一人の手を取りながらご奉公を遊ばされ、妙深寺の礎を築かれたのであります。
 御仏の、お祖師さまの御教えを世界に向かって説かれ、現証利益のご弘通を以てご奉公されました
 日爽上人は、日博上人の妙深寺発展のプロセスを継承すると共に、宗門にあっても義を貫かれ、身を以て「蘇生の義」、現証ご利益の尊さ、怖さを教えて下されました。
 今、不肖の弟子清潤は、御仏の本懐を探求し続け、歴史の中にある本門佛立の義、在り方を探求し、先師の御遺教を堅く守り、それを伝える努力を惜しまず、妙深寺のご信者の方々と共に一天四海皆帰妙法のご弘通ご奉公に邁進させて頂きたいと切望するのであります。
 お祖師さまが立教開宗された後、開導聖人により佛立宗がご弘通を開始して約一五〇年。
 交通やメディアの革新的な進歩など文明の発展を甘受する一方で、
人間の「生きる」「人を愛する」「育てる」「死を迎える」という基本的な営みに変化は御座いません。
「今」という時代に生きる私たちにのみ与えられた「使命」があると確信いたしております。
 ご宝前の御冥加と教講異体同心のご奉公を頂戴し、有縁の御導師方のご指導の下、祖願達成の一助となるべく、慚愧の念を忘れず、懈倦なく御奉公をさせて頂く所存です。ありがとうございました。


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