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  君の笑顔が見たくて

2007/9



 君の笑顔が見たくて、今日までご祈願してきました。君の笑顔が見たくて、二年という月日が過ぎました。ただ君の笑顔が見たくて、御題目をお唱えしてきたのです。夢のようです。涙が止まりません。有難う、ありがとう吏絵ちゃん。

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 「治療をしなければ一〇〇%死にます」
担当医はお父さんにそう告げた。ある日突然、一番大切な人の死を宣告される。受け入れ難い現実に、お父さんはただ泣き崩れたという。唐突に差し出された治療承諾の紙。署名しなければ、愛する我が子の命が無くなる。必死に書き始めたが途中で嗚咽して書けなくなった。奥さんが手を添えて、二人でようやく書いた、とお話ししてくれた。

 十二才の女の子。吏絵ちゃんは白血病という病に冒された。その日から、長く、苦しい闘病生活が始まった。

 二年前、そのお話をお聞きして胸が締め付けられた。吏絵ちゃんのために京都でお助行が始まったと聞き、妙深寺でも吏絵ちゃんのご祈願を始めさせていただくことになった。神奈川県下の十五ヶ寺でも、佛立開講一五〇年のご奉公に併せて吏絵ちゃんへのご祈願が始まり、遠くイタリア、ブラジル、スリランカ、ドイツ、イギリスのご信者方も吏絵ちゃんのご祈願を始めてくれるようになった。

 私たちは、吏絵ちゃんのためにご祈願をすることしか出来ない。御題目が時空を超えて吏絵ちゃんに届くことを信じて、ひたすらに御題目をお唱えさせていただいた。

 その吏絵ちゃんが、元気な姿で妙深寺にお参詣してくれた。ただひたすらに待っていた笑顔と共に。本当に有難く、尊く、最高の日、男泣きに泣けた。涙を流しながらのご挨拶、そして励ましの言葉。これほどの喜びはなかった。

 二年間。辛く苦しい白血病治療。白血病の病棟で永年勤務している看護師の朋美ちゃんが涙を流しながら励ましの言葉を送ってくれた。白血病の治療は他の部位の癌と異なり、抗ガン剤治療は十二才でも大人と同じものだという。言葉には表せないほど、本当に苦しく、辛いという。お父さんのお話でも、投薬の後は二日ほどグッタリして起き上がることも出来なかったと。眉毛、まつげまでが抜けてしまうほどの治療。それにたった一人で耐える吏絵ちゃん。その姿を見つめなければならなかったお父さん、お母さん。

 吏絵ちゃんは、数々の御利益をいただいて白血病という恐ろしい病を乗り越えた。お父さんからは、普通のお子さんは治療の前に熱が出たりして治療を延期したりすることもあるが、吏絵の場合は全くそれが無い、完璧なタイミングで全ての治療が行えたのだという。

 六月末、最後となった抗ガン剤治療も無事に終了し、数値も安定。ほぼ白血球の異常は見られずに、治療を完了。ここに書ききれないほどの現証の御利益を感得しつつ、吏絵ちゃんは八月二十四日に横浜妙深寺までお参詣くださったのだ。

 お父さんのご挨拶。

 「まず、びっくりしたのが……私たちが前に立たせていただいた時、みなさんの眼が、大変暖かい眼で…本当に…喜んでおります、というか…感謝しております…」と言ってくださった。何と妙深寺の方々は有難いのだろう。本当にそれも殊更に嬉しくて涙が出た。

 続いて、吏絵ちゃん本人からも、みんなにメッセージをいただいた。恥ずかしがり屋さんと聞いていたのだが、元気に、頑張ってご挨拶してくれた。お助行・ご祈願してきた方々にとっては最高に幸せな瞬間だった。御題目の御力、経力・現証そのもの。何とご信心は尊いのだろう。それをご家族も私たちも実感させていただいた。

 本堂のお参詣者から暖かい言葉が続いた。

 「今まで治療で頑張ってきたのだから、やれなかったことも楽しんで。頑張って」「私も吏絵ちゃんと同じ病気だと言われたこともあるけど、御法さまのお陰で病名まで変わってお計らいをいただいたの、本当に有難いの。吏絵ちゃんも、これからは学生生活を楽しんで、頑張って」

 そして、特に私が涙したのは、小泉氏の姿だった。彼はその日、ソフトバンク社長の孫氏への直接プレゼンテーションだったのだが、「それ以上に吏絵ちゃんのことが大切だ」と言ってお参詣された。そして、吏絵ちゃんの元気な姿、笑顔を見て、子どものように泣きながら「吏絵ちゃん、頑張って」と語った。その姿に私も涙がポロポロとこぼれた。

 小泉氏は、米国出張中にメールで十二才の吏絵ちゃんが白血病と闘い、お助行が始まっていることを知った。自分の子どもと同い年ということで、涙が出たという。そのままホテルの部屋でお看経を始め、以来二年間、吏絵ちゃんのご祈願を続けてきてくれた。

 初めて吏絵ちゃんの笑顔を見たその日、肩を揺らしながら泣いて、「人生の中でこんなに嬉しいことはない」「こんなに泣いたのははじめて」と言っていた。普段は泣くような男ではない。その男が泣いている。哀しいのではない。自分のことで泣いている訳でもない。吏絵ちゃんのために、御法さまのお導きで会えたことに泣いていた。

 お助行させていただいたことで、吏絵ちゃんご家族に何度も御礼を言われた。しかし御礼を言いたいのは私たちの方だ。吏絵ちゃんは病気を通じて、私たちのご信心を起こし、ご信心を教えてくれた。御題目の御力の尊さ、強さ、その慈悲、暖かさ、家族、ご信者同士の絆、様々なことを教えてくれた。

「衆生病む故に菩薩また病む」

 吏絵ちゃんは私たちにとっての菩薩に違いない。

 お参詣後、吏絵ちゃんとランチを食べ、アイスクリームを食べた。食事制限が無くなったのは七月の中旬とのこと。本当にありがたい。楽しく歩き、一緒にアイスを食べられること。その全てが、言葉が見つからないほど有難い。これが佛立信心の喜び。

 エゴに満ちた世の中で、誰かのために祈ることが出来る私たち。誰かのために祈ろうではないかと声を掛け合うご信心。人を幸せにすることで自分が幸せになれると教えていただき、実践すれば必ず現証の御利益、サインが顕れる。これほど有難いことはない。

 これからもご祈願を続けよう。もっと笑顔が見たいから。勿論、吏絵ちゃんだけではなく、苦しみ悩む全ての方の笑顔が見れるようご奉公させていただこう。



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