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  AKB48と妙深寺

2010/7



 数日前、何気なくテレビのチャンネルを回していると、秋元康氏と勝間和代姉の対談が放送されていました。不思議な組み合わせに興味を持ち、観ることにしました。

 その番組は「仕事学のすすめ」というNHKの番組で、伝説的なプロデューサーである秋元康氏の企画力や発想法に迫るものでした。秋元康氏は、「ザ・ベストテン」の放送作家であり、美空ひばりさんの「川の流れのように」の作詞家、小説家としても知られています。

 私の青春時代は、常に秋元康氏の仕掛けの中にありました。それほど強い影響力、才能を持たれた人物が秋元康氏でした。

 その番組を観ていて驚きました。秋葉原の劇場、国民的なアイドル云々、と私の知らない秋元康氏の業績が紹介されていました。はて、何のことかしら、最近で、そんなに当たったお仕事があったかな、と失礼にも考えていました。

 えー、あれ、ちょっと待てよ、あの、最近よく話題になっているAKB48というアイドルたちは、秋元氏のプロデュースだったの?知らなかった。驚きました。

 勝間女史との対談から、秋元氏とのご縁を思い返すと共に、頭の中の回路がつながってゆきました。

 AKB48は、秋葉原の専用劇場で連日ステージを行っています。身近なアイドルは、そのステージから全国区のアイドルを目指す。私もテレビで観たことがあります。「総選挙」と呼ばれる人気投票を行って、女の子やファンの男の子までが泣いているのを見ました。すごい人気だと感心していました。

 それにしても、ということは、私が秋元康氏に呼ばれてご回向をさせていただいたのはAKB48の専用劇場ということになります。AKB48。全く遠い世界の話だと思っていましたが、私も妙深寺も、不思議な御縁で結ばれていました。

 二〇〇六年四月十三日午後九時、今から四年以上も前のことですが、私は秋葉原のドン・キホーテ8Fに向かっていました。

 当時も、私は何の知識もなく、ただ、秋葉原の劇場に幽霊が出る、女の子やスタッフが怖がって仕事が進まない、レインコートを着た人物が監視カメラに映ったこともある、客室にいる、楽屋にも出る、困っている、と相談を受けました。

 さらに二年前の二〇〇四年四月、私はある放送作家の方が危篤とのことで、慶応義塾大学病院の隔離病棟に呼ばれました。大先輩から、大切な友人なんだ、何とか丁寧に見送りたい、長松頼む、と言われました。しかし、葬儀だけするのは佛立ではない、生きている間にひと目会いたいと告げ、無菌室に入って手を握り、御題目をお唱えしました。その光景は今でも脳裏に焼き付いています。翌朝、その方は安らかに亡くなりました。

 お話くださった先輩は御本尊をいただいてご信者になられました。そして、葬儀は私が勤めました。その時の葬儀委員長は秋元康氏で、秋元氏は、本当に丁寧に、立派に、ご友人をお見送りになられました。四十九日忌の法要には妙深寺にもお参詣され、上行所伝の御題目を皆で唱えてご回向が出来ました。

 そうした御縁から、劇場に霊が出るという騒動の際、秋元康氏が「横浜の、あのお坊さんにお願いしたい」と言われ、それをお聞きしてご奉公に向かったのでした。

 対談番組を観るまで忘れていたのですが、ドン・キホーテの巨大なエレベーターを使って大御本尊を劇場にお供し、ステージ中央にご荘厳いたしました。御題目口唱の前に、本当の仏教が説くご回向についてお話しました。御題目の唱え方についても練習しました。私たち僧侶が唱えるだけではなく、秋元氏をはじめ、劇場の総責任者であるオフィス48の芝社長、先輩もスタッフの方々も、皆が真剣に御題目をお唱えくださいました。お看経終了後、重ねて御法門をし、劇場の各所にお供水をおまきして帰山いたしました。

 このご奉公の後、私は芝社長に手紙を書きました。何とか本当の仏教をお伝えしようとして。

「ありがとうございます。
 先日、お伺いさせていただいた妙深寺の長松清潤でございます。
 限られた時間の中、皆さま方のご理解とご協力の下、有縁無縁の諸霊魂に対してご回向させていただくことができました。本門八品所顕・上行所伝・本因下種の南無妙法蓮華経と、皆さまと共に唱えられたことによって、法界の群霊に功徳がご回向されたことを確信しております。」

 このような書き出しでA4用紙2枚にもなる長文。中略するしかありませんが、重ねて「回向の義」を述べ、続いて「霊媒師」等との違いを明記していました。

「私たち僧侶はあくまでも霊媒師ではありません。私たちの宗派は政治的な活動や広報宣伝も不得手、葬式回向や墓地販売などで生計を立てている宗団でもありません。ただひたすら、生きている方々を対象にした「普通のお寺」です。
 「生きた人を相手にしている」といっても新興宗教ではありません。
 先日お話ししたように、僧侶は、霊媒師のように語ることは禁じ手です。動物のように人間が失った「第六感」を働かせる人がいたとしても、顕教の僧侶がその感覚で人々に法を説くことはありません。真の回向は霊媒師には出来ない。」
「悪いことが続く因縁の深い場所、会社や自宅等は、○○神社の御札などよりも御本尊を奉安することによって気休めではない、本当の回向が出来、仏教的なポリシーのある生き方、経営が出来るようになります。お経には「如風於空中・一切無障礙」とあり、必ずお守りがある生き方となります。」
「この御縁をいただいて、何とか芝さまのお気持ちに報いなければならないと思い、このように長々と書かせていただきました。法を説くことが私にとってのご奉公。どうかご容赦ください。
 妙深寺の寺報を同封いたします。末筆では御座いますが、芝さま、秋元さま、そしてスタッフ皆さまの事業の益々のご発展とご健康を心から祈念しております。
 ありがとうございました。合掌、
 横浜妙深寺 長松清潤拝、」

 長文ですから抜粋しましたが、霊媒師やお祓い等とは違う、本当のご回向について、必死に説いていました。

 当然ですが、御題目のご回向によって劇場での怪奇現象は消え、昔話や笑い話になったそうです。今やAKB48の大活躍は周知の 通りで知らないのは私だけでした。とはいえ妙深寺は彼女たちの活躍を陰で支えていたのでした(笑)。



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